デジタル×営業 トップ対談
荒川 朋美/執行役員 Chief Digital Officer
湯浅 裕司/執行役員 生活産業・アグリビジネス本部長
2022.05.17

荒川:デジタルを実装することとは、事業にテクノロジーを使ってどう価値を付加するかを考えることです。
双日が長年培ってきたビジネスは、「お客様との信頼関係=リレーション」を大切にしています。その信頼関係のビジネスにデジタルを実装することで、ビジネス拡大の大きなチャンスがあると思います。
私はIBMでは、さまざまなお客様のシステム化・デジタルの実装をご支援してきました。総合商社である双日は、さまざまな事業を有し、その規模感が大きいので価値創造もスケールが大きくてとても面白いですし、社会を変革し、より良くすることのできる事業がたくさんあります。しかしDXは魔法の言葉ではありません。さまざまな事業でそれぞれにテクノロジーの実装が必要です。
そのためには、全社員が、基礎的なITスキルを持ち取り組む必要があると考えています。必要な事業にテクノロジーを適用し価値向上していくには、丁寧に長い道のりを進む必要があります。
湯浅:私は入社して31年。過去のタイプライターやテレックスの時代から現在まで、著しいテクノロジーの変遷を体感してきました。元々、新しいことに興味を持つタイプで、90年代には趣味の範囲で自らプログラミングし作品を制作していました。その経験があるため、現在主流になっているアプリを使うと、コードの構造や仕組みが何となくイメージできます。そのような視点から「今のビジネスに、デジタル技術をどう実装できるだろう」と考えていて、新しい発想・事業につなげていきたいと思っています。
荒川:プログラミングとは、頭の中にある思考をコードに置き換えるだけで可能です。今のプログラミングソフトは便利になり、すべてをコーディングする必要はなく、直感的な操作、例えばドラッグアンドドロップによってプログラムを作れるようになりました。作ったコードを自分のスマホで簡単に動かしてみることもできます。例えば、調査用のアプリを作って情報収集し、そのデータを分析したり他の情報と掛け合わせたり、試行錯誤を繰り返しながらビジネスの構想を創っていく。テクノロジーを使うことで、このような仕事の進め方ができ、発想の質が高まります。このことに一人でも多くの社員が気づき、スピード感を意識しながら発想を実現につなげていってもらいたいと思っています。
湯浅:先日、当社が展開するショッピングモールにおいて、ある調査を実施したところ、それまでは東京から来るお客様が大半と考えていましたが、実際は周辺に住むお客様がほとんどだと分かって驚いたことがありました。それからは広告内容を変え、新たなマーケティングにつなげているところです。データによって実態を可視化し、お客様に満足いただけるアイデアを考える、その結果ビジネスが拡大していく、というサイクルにテクノロジーをもっと活かしていきたいです。
商社のビジネスの基本はBtoBであり、一般消費者の方々に直接お目にかかるケースは少ないことも事実です。
荒川:マーケットインの発想とデジタル技術を掛け合わせれば、BtoBビジネスからBtoBtoCへと拡げることも可能だと思います。従来のように感覚的に消費者の動向を予測するだけではなく、アプリやさまざまなデータを駆使することで、より広く正確にマーケットを捉えることができます。そのデータをもとにお客様と対話しながら、ビジネスの規模を最大化するアイデアを一緒に考えていく。湯浅さんが今取り組んでいらっしゃるアグリビジネスに応用するのであれば、気象予測や穀物の市場動向など、農家の方々が必要とするデータをアプリで表示し、さらにどのようなデータや機能があれば便利になるか、対話を重ねる。そのアプリをきっかけに、農家の方々のニーズを把握しながら現地サプライチェーンに入り込み、ビジネスチャンスにつなげることもできると考えています。
荒川:今、DXが注目されていますが、人と人の信頼で成り立つビジネスと正しいテクノロジーの理解がなければ、時間をかけても本当のトランスフォーメーションにはつながりません。双日には、常に変化への意欲を強く持つ、前向きな社風がある。やりたいことの実現のために未開の地に足を運び、ゼロから関係性を築いてビジネスにつなげるような、新しいことに物怖じしないチャレンジ精神がある。そんな風土を感じ、「この会社の方々と本気でやってみたい。これならできる」と思ったのです。
湯浅:私にとって、双日は自己実現の舞台です。自分がやりたいことにチャレンジさせてくれる場所であることは、昔も今も変わりません。
荒川:私もまったく同じです。真のDXに終わりはなく、IT業界ではジャーニーと呼びます。常に最新技術を駆使しながらビジネスを進化させるため、アプリケーションや人のスキルも進化させていく、長いジャーニーの始まりです。私自身、双日が長年培ってきたビジネスにテクノロジーを駆使し価値向上させていく、その効果を実感できる新たな舞台にワクワクしています。