すべての経験が、「今」をつくる。
新井咲里/アグリビジネス部 肥料事業課
2026.02.27
私は、幼い頃から海外で働くことを身近に感じて育ちました。父の仕事の影響もあり、「将来は自分もグローバルな環境で働く」という思いは、特別な目標ではなく、ごく当たり前の進路として心の中にありました。大学では国際教養学部を専攻し、留学生が多い環境の中で幅広い分野の基礎的な教養を身につけるリベラルアーツを学びました。多様な価値観や背景を持つ仲間と議論し、共に学ぶ経験を通じて、「違う前提を持つ人とどう協働するか」という視点が、自分の中に少しずつ培われていったと感じています。また、大学時代は、体育会の日本拳法部に所属していました。一瞬で勝敗が決まる競技の中で、目標を定め、課題を洗い出し、行動に落とし込む。その積み重ねが結果につながることを体感しました。この「考えて、決めて、やり切る」姿勢は、その後の私の仕事観の原点となっています。
就職活動では、大学の先輩方が総合商社で若手のうちから裁量を持ち、グローバルに活躍する姿に惹かれ、「自分もここで挑戦したい」と感じました。総合商社各社がそれぞれ異なるカラーを持つ中で、双日は、社員一人ひとりが自身の考えやポリシーを大切にしながら仕事に向き合っている印象が強く、「この会社の人たちと一緒に働きたい」と心から思えたことが決め手となり、2015年に入社しました。
入社当初、私は営業志望でした。しかし、最初の配属は財務。正直、想定外で戸惑いもありました。それでも、「与えられた場所で本気で取り組んで成果を出そう」と決意し、目の前の業務に真摯に向き合うことを決めました。外国為替や貿易実務を皮切りに、全社の資金計画やキャッシュフロー管理、新規投資案件の審議など、徐々に会社全体の意思決定に近い業務を経験しました。営業と対等に議論するためには、数字を読むだけでなく、その裏にある事業の構造、リスク、収益性を理解し、先を予測できる「財務のプロ」である必要があります。勤務外でも自己研鑽として学び、学んだことをすぐ実務で試す。その繰り返しの中で、「数字から事業を見る力」が、自分の中に確かな土台として形成されていきました。
入社後7年が経った頃、入社時から希望していたグローバルな環境を求めて自ら手を挙げ、私はベトナムの肥料製造販売会社であるJapan Vietnam Fertilizer Company(ジャパン ベトナム ファーティライザー)へ出向しました。社員300名ほどの会社で、経理、法務、人事、ITなど、これまでの財務の枠を超えたコーポレート領域全般を担いました。初めて部下を持ち、年上の現地スタッフと共に組織を動かす立場にもなりました。文化や価値観の異なる環境で、限られた情報の中で判断し、決断し続ける経験を通じて、私は「判断力」を身につけると同時に、人を動かすことの難しさ、そして組織を背負う責任の重さを実感しました。思うように進まない場面も多くありましたが、自ら率先して手を動かし、丁寧に対話を重ねることで、少しずつ人や組織との距離を縮めることができました。その過程で、立場や役職ではなく、自らの行動が周囲からの共感や信頼を生むことを学びました。この経験は、今の仕事における意思決定や人との向き合い方の軸になっています。
現在私は、肥料の枠を超えた新規事業に挑戦しています。入社11年目にして初めての営業ですが、不思議と「ゼロからのスタート」という感覚はありません。理由は明確です。財務で身につけた「数字から事業をみる力」が、私の根幹を支えているからです。今は自分で事業計画をつくり、相手に説明し、納得してもらう立場ですが、かつて審議する側にいた経験があるからこそ、「どこが問われるのか」「どこに説得力が必要なのか」を理解しています。数字は単なる計算結果ではなく、事業の意思を表す言語だという感覚は、財務で徹底的に鍛えられました。
さらに、ベトナムの事業会社での経験が、営業としての行動の質を大きく高めてくれていると感じています。ベトナムの現場では、情報が十分に揃わない中で判断するスピード感が求められる場面が日常的にありました。完璧な答えを待つのではなく、「現時点で最善と思える選択をし、前に進む」。その「判断力」が身についたことで、今の新規事業開発でも、現状を冷静に捉え、その中で導き出した最適解を提案し、先輩方からフィードバックを受けて改善するというPDCAをスピーディーに回せています。もし最初から営業に配属されていたら、今の自分はなかったと思います。たとえ初期配属が希望通りでなくても、その場所で真剣に努力を重ねて成果を出すことができれば、その経験は必ず次につながる。私は自分のキャリアを通して、そのことを強く実感しています。
今の部署での目標は、農業関連分野で新規案件を早く形にして、双日にも社会にも必要とされる事業を生み出すことです。その根底にあるのは、「グローバルに働き、社会に貢献したい」という、入社当時からの変わらない想いです。そして農業を支える世界中の人にとって意味のあるビジネスに育てていく。そのために、自分は今何を積み上げるべきかを考え続け、行動したいと思っています。
入社から10年の間に、財務、海外事業会社、営業という3つの異なる業務を経験してきました。一見つながりがないように見える経験も、振り返ればすべてが今につながっています。思う通りに進まない時期もありましたが、目の前の仕事に本気で向き合い続けた結果、キャリアは一本の道になりました。これからも、自分の意思で考え、決断し、動き続ける。その積み重ねによって、社会に価値を生み出せる人間でありたい。「いつも本気で、真剣に、楽しく仕事をする」をモットーに、双日という場所で、挑戦を続けていきます。


