変えていくこと。守っていくこと。
小嶋麻衣/リテール事業第三部第二課
(ロイヤルホールディングス株式会社出向)
2025.04.08

私は、父の仕事の関係でマレーシアに生まれ、その後もアメリカの大学に入学するまで長くタイや台湾といったアジアの国々に住んでいました。それらの国々は、日本とは異なり、実にさまざまな文化や言語、宗教などが混在しています。幼い頃から異なる価値観を持つ人々と接するのが当たり前だったので、トラブルや、コミュニケーション上での些細な行き違いがあったとしても柔軟に対応し、何事もポジティブに捉えることができるようになったと思います。
商社で働きたいと思った理由も、海外での暮らしにあります。いちばん長く住んだのがタイのバンコクですが、当時、バンコクは急速な発展の最中にあり、とてもエネルギッシュな空気に包まれていた一方で貧富の差も顕著になっていました。私は、貧困に苦しむ人々を目の当たりにして、将来は途上国で働き、誰もが幸せに暮らせる社会づくりに貢献したいと思うようになり、その思いを就職するまでずっと強く持ち続けていました。双日は、マレーシアやベトナムなど東南アジアの国々で広く事業を展開しているため、私は、自分の夢の近くにあるこの会社に大きな魅力を感じ、うれしいことに入社することが叶いました。
私は、入社当時から、海外に出て働きたいという思いを上司に伝え続けてきました。その甲斐あって、入社5年目の2022年に、ベトナムで食品や消費財の輸入・卸販売を行うHuong Thuy Manufacture Service Trading Corporation(フントゥイ・マニュファクチャー・サービス・トレーディング)という双日のグループ会社に出向することになりました。若手のうちからさまざまな経験を積めるトレーニー制度*を利用して、1年間の貴重な経験をさせてもらったのです。
私がまずチャレンジしたのが、営業や配送業務の効率化です。ベトナムには、パパママショップと呼ばれる家族経営の店舗が多くあり、中には商品があまり動いていないお店もありました。そこで、私は、販売データや在庫データを活用し分析することで、そうしたお店との取引を整理・改善することから始めました。そうすることで、商品の動きが速いお店に、商品をタイムリーに確実に届けることを実現することができました。
そして、もうひとつはレッドブル社のベトナムにおける販売代理店契約の獲得です。ベトナムではタイ産の黄色い缶のレッドブルはそれまでも流通していましたが、日本でもおなじみのオーストリア産の青色の缶のレッドブルは流通していなかったため、その販売権の獲得に乗り出していました。私たちをパートナーとして選んでもらうために、ベトナムの市場や店舗、会社の営業体制やネットワークなどを実際に見てもらいました。レッドブル社の視察はホーチミンだけでなく、ハノイやダナンも含め何十日にもわたりましたが、その結果、私たちを選んでくれました。その理由は、ベトナムでトップクラスの輸入・卸販売企業であること、ベトナム全土を網羅する強い販売力や配送スキームを持つことだけではありません。レッドブルをベトナムでしっかりと育てていき、ブランドとして確立するにはどうすればいいか。そのことをレッドブル社と同じ目線で真摯に考え、ともにとことん議論することで、信頼関係が構築できたからだと思っています。
*トレーニー制度・・・当社は経営人材の育成・確保のため、国内外へ派遣、MBA派遣・語学自己研鑽制度など、様々な研修を行っています。
詳細はこちら:人的資本経営|Sojitz ESG BOOK|サステナビリティ|双日株式会社
私は、2023年に帰国した後、国内外で外食事業やホテル事業を展開するロイヤルホールディングスに出向となりました。今は、戦略部という部署に所属し、総合商社である双日の知見やネットワークを上手く活用しながら、海外における新規事業開発を担っています。
2024年7月には、シンガポールのチャンギ空港に隣接する商業施設に、ロイヤルホスト初の海外直営店をオープンしました。また、アメリカで、双日、ロイヤルホールディングス、銚子丸の3社の協業による、寿司を軸にした新しい業態の店舗をオープンする予定です。アメリカの寿司市場は急速に伸びていますが、カリフォルニアロールなどのフュージョン寿司と、”お任せ”で提供する一人300ドル以上の高級寿司の2極化がますます進んでいる状態です。そこで、その間にあるゾーンとなる、ある程度リーズナブルな価格で本格的なおいしいお寿司が楽しめる業態づくりを狙っています。
そして、次はベトナムです。ベトナムでは、業態に捉われずに、立地や物件に合わせた様々な店舗を開発していく予定です。たとえば、面積の小さい物件であればオペレーションがシンプルで回転率の高い業態を当て込み、面積の大きい物件であればお客様がゆったりお食事とお酒を楽しめる業態といったかたちです。店舗のネーミングから外観、インテリアにいたるまで、それぞれのお店に合わせたベストなものを採用し、新しいブランドをつくっていきたいと思っています。ベトナムにおける双日の実績やネットワーク、そして、私自身のベトナム出向時の経験や仲間は、この事業を進めるうえで大きな助けになっています。
こうして私は日々チャレンジを続けていますが、最近特に思うことがあります。それは、ロイヤルホールディングスとして守らなければいけないことは絶対に守る。ですが、変えなければいけないことは変えて、果敢に挑戦するということです。ロイヤルホールディングスが創業以来、ずっと大切にしてきた、おいしさのクオリティや食の安心安全、そして質の高いホスピタリティは、世界中のどの店舗でも絶対に継承しなければいけないと思っています。でも、お店の業態は、世の中の変わりゆく食のトレンドやニーズに合わせて柔軟に変化させ、つねにその国のその地域の人の目線に立って、今までなかった業態をゼロから発想する。そのために私は、これからも新しいお店づくりのチャレンジの旅を続けていきます。
「食」「新規事業」「海外」と、私の興味のあることが3つも揃っていて、今、私は社会人になってからいちばん楽しいと思える仕事をさせてもらっています。1日として同じ日はなく、毎日が新しいチャレンジ、ワクワクの連続です。今後も、自分のやりたいことをビジネスに反映させて、いろんな国でいろんな業態のお店をつくり続けていくというのが私の夢です。今まで日本の食に触れることのなかった国、地域の人にも、ロイヤルホールディングスの食とのおいしい出会いをお届けしたいと思っています。
そして、いつの日か、私が双日に戻ったあとは、ロイヤルホールディングスで培ったB to Cビジネスのノウハウを周りの人に伝えることで、会社に貢献できるともっとうれしいです。