インドネシア唯一のメタノールメーカー
安定操業を実現し、次世代の環境配慮型メタノールへ挑む
2026年10月26日
2026年10月26日
メタノールは、主に天然ガスを原料にして作られる、様々な化学製品の元になる基礎的な化学品です。木材用の接着剤に使われるホルムアルデヒド、塗料・合成繊維の原料になる酢酸などの化学製品用途に加えて、昨今はバイオディーゼルや舶用燃料などエネルギー分野でも幅広く使われています。
KMIが操業を開始した1998年当時のインドネシアでは、メタノールの用途はホルムアルデヒドが中心で、需要は年間30万トン程度でした。状況が変わったのは2010年代後半です。約3億人という人口を抱え、国の発展にともないエネルギー需要が増大する中で、エネルギーの輸入依存を軽減するため、インドネシア政府は国内で豊富に採れるパーム油を活用し、バイオディーゼルを軽油に混合して使用するエネルギー転換政策を推進しました。バイオディーゼルの原料となるメチルエステルを作るにはメタノールが必要なため、それまでの化学製品用途に加えてエネルギー用途の需要が一気に拡大したのです。現在の国内需要は190万トンにまで達し、今後は220万〜230万トンまで増えると見込まれています。(*1)
(*1)双日調べ
1990年代前半、双日の前身の日商岩井にとってインドネシアは最注力国の一つでした。インドネシア国内でメタノールの独占販売権を持っていたPT.Humpussがメタノール新工場の建設・運営を構想するという情報を入手しました。各組織が持つプラント建設、ファイナンス、原料である天然ガス、メタノールの販売、さらには最終製品の合板の取り扱いに関する知見を結集させ、商社の総合力を発揮できると判断し、事業に参画しました。
立ち上げ当初は、KMIの生産能力である年間66万トンに対し、インドネシア国内の需要が小さく、国内のみならず、海外にも販売する必要がありました。しかしながら、同時期はアジア通貨危機直後であったこともあり、市況がメタノール史上最安値を記録するというきわめて厳しい経営環境でした。双日が持つネットワークを活用した新規販売先の開拓、物流ノウハウを生かした柔軟な輸出対応、営業部門と財務部などのコーポレート部門が連携した資金運営など、KMIと双日が一体となり、困難な時期を乗り越えました。現在、KMIは「国内唯一のメタノール製造企業」として、インドネシアのエネルギー産業、化学産業を支えています。
KMIが約30年にわたり安定操業を維持できているのは、社員の高い意識とチームワーク、日本の思想をインドネシア流に取り入れた企業文化が組織に深く根づいているからです。
200名を超える従業員を抱える製造現場では、KMIの行動指針であるIntegrity(誠実)、Loyalty(信頼)、Professional(プロフェッショナル精神)を社員が体現し、それぞれが自身の業務に対して高い責任感をもって役割を担うことが重要です。社員一人ひとりの高い意識を醸成するために、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの徹底する日本の「5S」(*2)をインドネシア流に取り入れた文化も根づいています。KMIでは毎朝、定例会議を実施しています。工場と本社をオンラインでつなぎ、経営陣も参加するこの会議では設備や生産状況から、日々発生する課題やマーケット情報までを全社で共有し、改善策を協議し、各々実行するというPDCAサイクルを組織全体で徹底しています。このような日々の積み重ねの結果として、安全・安定操業を実現し、同業他社に比べて稼働停止期間を最小限に留めており、高い生産性を維持しています。
(*2)5S:製造業の現場で整理・整頓・清掃・清潔・しつけを徹底し、生産性向上と安全性確保を目指す製造業の基本的改善活動
安定操業には、安定した販売活動も欠かせません。製造されるメタノールは液体で、貯蔵するタンクには限りがあります。インドネシア国内需要が減少するときには、双日が持つグローバルネットワークで輸出に切り替え、適切な在庫水準を維持することで、KMIのフル生産を支えています。
現在、KMIはメタノール安定供給の役割にとどまらず、インドネシアが抱える社会課題に応える環境配慮型事業への転換にも一歩を踏み出しています。
メタノールは、炭素を含む基礎化学品です。そのため、製造には原料となる天然ガスの炭素分を利用しますが、近年ガスの組成が変化し、含まれている炭素分が減少してきています。この課題に対して、KMIでは炭素の減少を補うために隣接する肥料工場から排出される二酸化炭素を原料として利用するCCU(*3)と呼ばれる取り組みを行っています。2026年にCCUによるメタノール生産を開始し、最終的には年間約2万3,000トンの増産を目指しています。CCUにより、排出される二酸化炭素を原料として使用することで、社会課題である温室効果ガス削減の一助にもなっています。
(*3)CCU:Carbon Capture and Utilization、工場などから排出されるCO₂を回収し、資源として利用すること
もう一つの挑戦が、パーム油の製造過程で発生する残渣(Palm oil mill effluent、以下POME)を活用したバイオメタノール製造です。POMEの処理過程において有機物が分解されて発生するメタンは二酸化炭素のおよそ25倍の温室効果を持つとされています。KMIでは、POMEから発生するバイオガスを回収・精製されるバイオメタンを原料としたバイオメタノールを生産することを検討しています。これが実現すると、温室効果ガスを低減させるとともに、インドネシア政府が推進する「Waste to Monetization(廃棄物の価値化)」を実現する取り組みとなります。
また、KMIでは、インドネシアに根付いた企業として、地域社会への貢献も非常に重要な取り組みと考えています。メタノールの製造過程では液体窒素が副産されます。専用に製作されたクーラーボックスに液体窒素を充填し、工場近隣の漁民に提供しています。従来は約8時間しか保冷できなかったものが、マイナス190℃の液体窒素を活用することで約72時間まで保冷可能となり、漁業の効率向上や漁船運航に必要な燃料消費の削減につながっています。
KMIは、社会の変化に応じて生まれる新たな課題に対し、環境配慮型事業への転換という新たな取り組みで挑戦するとともに、長く操業を行っている地域社会へも貢献することにより、企業としての使命を果たしていきます。
そして双日は、KMIの取り組みを支援するとともに、長年培ってきたメタノール事業を磨き上げ、グリーンエネルギー分野という新しい領域にも拡大させることで、さらなる事業価値の向上を目指していきます。


