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  • ポートフォリオ変革の手ごたえ

    中期経営計画2026(以下、中計2026)の2年目が終了しました。2年間累計で実行した約3,000億円の投資、その一方で実施した不振事業の整理。2026年3月期は、その両方に同時に取り組んだ1年でした。

    一方、目標に対する成果で見ると、2026年3月期の当期純利益は1,036億円と、期初計画の1,150億円を約100億円強下回りました。マーケットの期待にお応えできなかったことは、率直に認めなければなりません。好調な事業がある一方で、期間損益でマイナスとなる事業がありました。新規投資からの収益貢献がそれをある程度カバーしたものの、完全に補うには至りませんでした。加えて、不振事業の整理を進める過程で一部損失を計上したことも、計画との乖離に影響しています。

    この損失については、将来の足かせになる前に整理を決断したことによるものであり、タイミングの問題という側面が大きいものです。中期経営計画の2年目にやるべきことをやったという観点で、過度にネガティブには捉えていません。投資と撤退の両方を推し進めたことで、ポートフォリオの中身は変わってきています。

    投資家の皆様とは、中計2026の発表以来、面談を重ねてきました。当社が目指す方向性への理解は着実に深まっており、複数の投資家の方々から、「買収による利益成長のみではなく、事業全体として稼ぐ力をつけてきている点を評価している」との声をいただいています。不振事業の入れ替えに踏み切ったことについても、高くご評価いただいています。対話の中で一貫して問われるのは「本当にROE15%を達成できるのか」「どうやって達成するのか」という点に収束してきています。

投資の入り口から出口まで、問い続ける

中計2026では6,000億円の投資枠を設けています。2年間での累計投資実行済額は約3,000億円で、最終年度に向けてさらに2,000億円程度の実行を見込んでいます。残枠については、「枠があるから使う」という発想はありません。予定どおりに枠を使い切ること自体が目的ではなく、質の高い案件を見極めながら実行していく方針です。個々の案件に投資をするのではなく、事業のカタマリとなりうる、そして勝ち筋が持てるところに絞って実行していきます。投資の入り口では、ハードルレートを超えることはもちろん、5年程度でROIが10%に達する見込みがあるかを確認しています。投資実行後も、計画から3割以上乖離した事業はモニタリングリストに移し、キャッシュリターンベースのROICまたはROICが6%を3~5年で超えられない見込みであれば、EXITの方向で判断します。このように、計画値を下回った前中計までの投資からの収益貢献ついては、構造改革により改善を図る一方で、今中計の新規投資については、厳選した投資実行によりROIが2025年3月期の2%から2027年3月期見通しは6.5%と数字が積み上がってきています。初期段階の案件も含まれており、今後はROI10%程度をターゲットに進めていきます。

うまくいっている事業領域では、仕事が仕事を生むように、やるべき案件が次々と出てきます。一方で収益性が十分ではない、あるいはリターンまでに時間がかかるけれどやりたい、という案件も出てきます。それ自体を否定はしませんが、そうしたものばかりではROIは上がってきません。案件の入り口から買収後の価値向上のモニタリングまで、規律をもって臨むことを徹底しています。そうでなければ、売上は伸びても収益性が上がらないという状況になりかねないからです。「やりたいから」「面白そうだから」ではなく、「しっかりとした勝ち筋があり、さらに成長すると確信できる事業を作れているのか」。この問いを、投資の入り口から出口まで、一貫して問い続けることが投資規律の本質だと考えています。

また、CROICは単なるモニタリング指標ではなく、投資判断の軸の一つになっています。セグメントごとのCROICが上がってこない場合には、プラスの事業が伸び悩んでいるのか、マイナスの事業が足を引っ張っているのかを確認し、後者であれば入れ替えや改善によってセグメント全体の数値を引き上げていきます。

判断のスピードを高め、能動的に動く

2026年3月期は、事業売却や撤退により、業績の芳しくない事業の整理にも注力しました。今回の整理で最も重要だったのは、追い詰められて仕方なく動いたのではなく、能動的に動いたという点です。利益が一定基準を超えていても、5年後・10年後に貴重な人材やリソースを投入し続けるべき事業かという観点から、見直しを判断するケースもあります。こうした事業については、単純なEXITではなく、ベストオーナーとなりうるパートナーに引き継いでもらうという形も含めて検討しています。整理したことで生まれた資金や人材は、収益性が高い事業領域や拡張性のある事業領域へ振り向けていきます。

不振事業への対応において最も避けるべきは、最初の計画と比べてうまくいっていない状況や、その要因が曖昧なまま続いてしまうことです。最初の見立てどおりに全てがうまくいくことはありませんが、問題はそこからの修正が適切なタイミングで行われているかです。大事なのは、気づきのタイミングを早め、アクションを起こし違ったらまた修正する、そのサイクルを速く回すことです。これが事業の成功確率を上げ、失敗のダメージを小さくすることにつながります。

こうした判断の質とスピードを高めていくために、昨年から不振事業の振り返りをセグメントトップが集まる場で共有しています。表面的な総括や忖度ではなく、本質的な議論ができる場で失敗事例の共有をすることが目的です。

「双日らしい成長ストーリー」で非連続な成長を実現する

  • cfo概要
  • 現在の当社の資本コストは9~10%程度と見ています。それに対してROE目標は、中計2026の3ヵ年平均で12%、Next Stageで15%を掲げています。12%はエクイティ・スプレッドを確保するための最低ラインであり、十分な水準とは考えていません。資本コストが9~10%であれば、ROE15%というリターンを出せていないと、投資家の皆様からの信任を受けて自由な経営はできないと考えています。他社商社との比較でも見劣りせずに、双日らしい経営を行える水準、それがターゲットであるROE15%です。他の商社も13~15%程度の水準には達しており、当社が規模でも収益性でも劣るというわけにはいきません。簡単ではない目標ですが、達成できると考えているからこそ掲げています。

資本コストを下げるためには、ROEを上げることと、「変わり続ける会社」というトラックレコードを積み上げることの両方が必要だと考えています。ポートフォリオを変えることが目的ではなく、結果として私たちの事業ポートフォリオが収益性も成長性も高くなっているという実績を積み上げていくことが重要です。その継続性に対して、投資家の皆様からの信頼を高めることが、資本コストの低減につながると考えています。ROEを15%に近づけていく上でも、財務レバレッジをかけて数字を上げていくのではなく、稼ぐ力を高めた結果として達成していく考えです。稼いだキャッシュと資産入替による収入を原資に、成長投資と株主還元を着実に実行していくというキャッシュ・フローマネジメントの基本的な考え方は、今後も変わりません。

私がイメージしている成長は、今ある事業が毎年10%ずつ伸びていくような直線的なものではありません。新しい事業が組み合わさり、新しい機能が積み上がることで、非連続的に上がっていくことを繰り返していくイメージです。勝ち筋を見出し、新しい事業を作り、また領域を広げていく。全くの飛び地が加わるのではなく、事業を磨き上げることでぐっと伸びる。当社が言う「非連続な成長」とはこのことです。急激に角度が上がるような非連続ではなく、カタマリができ、それがまた広がり、また次のカタマリができていく。こうした成長の仕方でNext Stageに向かうイメージを、2027年3月期はさらに具体的に示していきます。

中計2026の発表以来、決算説明会で「双日らしい成長ストーリー」として事例を示しながら説明を続けています。大切なのは、そこで示したイメージが実績としてどう表れているのか、トラックレコードへとつなげていくことです。話題性のあるものを出して華やかに見せるのではなく、当社の価値創造の道筋を具体的にイメージしていただけるよう、良い点も悪い点も含めて実績として示し続けていきます。株主還元については、DOEによる安定的な配当の積み上げという基本方針を維持します。まずROEを着実に高め、「双日らしい成長ストーリー」を実績として示すことで、企業価値の向上と市場からの評価につなげていくことが重要だと考えています。

2026年3月期の株価推移は、特に後半に大きく上昇しました。レアアースへの期待や市場全体の上昇といった外部要因もあったと見ていますが、これまでのように市場が上昇する局面でも当社株が十分に反応しにくい状況から、当社の変化や成長への期待を株価に反映していただける局面が増えてきたと受け止めています。

トラックレコードを積み上げ、株主・投資家の皆様の信頼に応える

  • 今、CFOとして社内に発信していることは、シンプルに「しっかり稼ごう」ということに尽きます。そのために資金も環境も整えてあるのでどんどん使って稼いでほしい。この言葉の背後にあるのは「人」への期待です。営業もコーポレートも、皆が自分の価値と会社の価値が上がるように、スピードと質を上げてほしいと考えています。自分で考え、行動し、失敗したら見直して次に活かす。先読み、先回りといった当社のDNA、知的好奇心、本質を掴むための適切な問いといったことが、全てつながってくると思っています。人の質が上がれば、スピードも上がり、結果として利益も上がる。社員一人ひとりがやりがいを感じ、成長し、また次のステージの仕事ができます。このサイクルが回り続け、皆で良いと言える会社になることが理想です。事業のカタマリをあと2つ3つ作っていくという2027年3月期のターゲットと同様に、それを推進していける人材を育成することが、この中計2026の仕上げとして最も大事なことです。ここまで述べてきた財務規律の徹底、ポートフォリオの変革、ROEの向上は、いずれも、人が生み出すものです。社長の植村が一貫して伝えてきたことと同じですが、CFOという立場からも、このことを確信しています。

  • cfo概要

言ったことを実行する。そのトラックレコードを誠実に積み上げていくことが、株主・投資家の皆様の信頼に応える唯一の道だと考えています。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

※所属組織、役職名等は2026年7月時点です

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